日なたのアイスクリーム

オタク気質30代の散文裏ブログ。日常での気づきやオチのない日記、犬や猫のことなど。

映画『シェフ』を観た(日曜日の充足)

朝起きたときの「調子」で、いつも通りの日々を過ごしていいのか、それとも少しゆるめたほうがいいのかはなんとなく分かる。コーヒーが飲める、ビールが飲める、体調の自己管理をするようになる(あるいはそうしなければならない)、大人になるとできることが増えるものだな。ここ数日は少し無理をすればころっと荒れ模様になりそうな状態だったので積極的な外出は避け、小さな猫のことを気にしながら自宅で本や映画や文章を書く時間に助けてもらいながら過ごした。ちなみに猫は食欲も戻り一安心。

ほぼ毎週通うピラティスレッスンも今週は控えたが、体がうずうずしてきたので(万全になってきた)夕方には良質な動画やなんとなくの記憶を辿りローラーで全身をほぐし、それから軽いマットピラティスとストレッチを行った。1年以上レッスン通いを続けていると、セルフでもそれなりに「効かせる動かし方」が出来るようになるのか、お腹とお尻と足がプルプルした。ちなみにやる気を出すために家なのにウェアに着替えた。今週も一日だけでも運動できた達成感に包まれて眠れそうだ。

 

夜、最近観てみたい熱が高まっていた映画『シェフ』を観た。Amazon primeにあって嬉しい。評判通りとても面白かった。これはかなりおすすめかもしれない。観終わったばかりなのに既にもう一度観たい。今度はおいしいホットサンドを─できるだけアツアツのものを用意して、熱い熱い、チーズがのびるとか言いながら食べて、観たい。本当はキューバサンドのレシピを検索したいけれど、深夜に見てはならないから明日にする。

食べることが好きな人はもちろん、飲食関係の仕事に就いている人が観ても面白くワクワクできる作品だと思う。ただ、食というテーマを通して人生を豊かにするための心構えというか、充実感、心から楽しめることを思い出す(見つけていく)面白さが描かれていると感じたので、この映画を単なる飯テロ映画と捉えるのは勿体ないかな(テロという言い方があまり好きではない意味も含めて)。料理にさほど興味がない人でも、観たらきっと愉快な気持ちになれるはず。所々のシーンで自分が自動的に笑っていることに気づいて少し嬉しかったもの。人と会っていないのに自然と笑顔になる瞬間があるっていい。核心にふれたネタバレはしないけれど、雰囲気が分かることを今から書くので読む人は注意してほしい。prime会員の人はここからすぐ観られるのでぜひ。

まず冒頭2分で陽気な音楽を背景にリズミカルで食材が喜んで踊るような包丁捌きの料理シーンが描かれ、ああこの映画好きだな、とすぐに世界に入り込めた。私は厨房が見える吹き抜けスタイルのお店ではほぼ必ずシェフが調理する姿が見える席を選ぶので、テンポよく美しく料理する姿を見るのが好きなのだと思う。こう表現していいか分からないけれど、動きのひとつひとつに無駄がなく、立ち回り含めた工程がすべて芸術的でひとつの作品のように感じるシェフやお店に出会うと感動する。この映画の料理のリズムもとても好きだった。

 

いくつかのレビューで見た通りあまり悪いキャラクターがいないのも良いし、問題が発生しても映画全体が人気店のように明るい雰囲気だから心が荒まない。題材的に料理がおいしそう、お腹が空きそうなのは予想がついたとしても、テーマの魅力、キャラクターや役者の魅力、応援したくなるストーリー展開、溶け込み気持ちを盛り上げる音楽、印象的な言葉、観終わったあとの満足感、これらが揃っていないと繰り返し観たいとはならないから。

また行きたいお店、リピーターになる理由も、味と同じぐらい「お店全体の雰囲気」が私の中ではとても重要。料理も映画も、もっと言えば他の事柄も同じ原理で、どの調味料や空間の雰囲気が欠けても成り立たない良さってある。「あのとき食べたおいしさ」や満足感にまた出会えるか、それは本当に運やタイミングかもしれないけれど。

 

息子や元妻との関係性も良い。SNSネタも個人的にはいいスパイス。しばらくあの口笛に似たツイート音を思い出すだけでカールの気軽なツイートが浮かんで笑ってしまうな。インスタが登場しない不思議はあったが拡散性ではまあそうか。vineに時代を感じるのはSNSのスピード感ならではかもしれない。どんなに最先端の話題を取り入れても、後で見たらそれは歴史の1ページになる。というか息子可愛くて健気でSNSマーケター&クリエイターの素質ありだし、元妻は美人で優しくて同僚も打算がなくて主人公のカールをみんな慕っているのがほんと救いで嬉しい。これ以上は言えないけど、批評家は不器用なんだよ。とにかくおいしい料理を食べたように満足感のある映画。

ちなみに私はエンドロールまで、主人公のカール役の方が本物のシェフじゃないことを割と本気で忘れていた。そのぐらい腕のいい、明るい料理好きのシェフでしかなかった。

 

「世界に存在するのはサンドだけ」この言葉が妙に忘れられない。そういう心構えで仕事をしたい。どこで登場するかは、たぶんちゃんと観た人じゃないと永遠に分からない。この映画を観た人と話がしたくなっている。

 

安心してハッピーな気持ちに身を委ねながら観られる作品が好き。思ったより自分の中で重要なポイントかもしれない。そういう作品を休日やふと訪れた時間で観ていくことを繰り返せば、人生の中に確実に「いい時間」が溜まっていくのだなと思う。

この映画は安心できる。ただ、逆を言うとあまりハッピーじゃなくていい、ドロドロした映画が好きな人には少し物足りないかもしれないから、そこは好みに合わせて調整してほしい。それこそどんなお店でどんな料理を、誰と(もちろんひとりでも!)食べるのかは全部自由なのだから。

 

 

レビューもワクワクさせてくれる。趣味のひとつがユーザーレビューを読むことかもしれない。ただしクリックする前に注意は、映画にちなんでとてもおいしそうなレシピを教えてくれているユーザーがいること。寝る前に見てはいけないと言ったキューバサンドではないものの、そっちのレシピもおいしそうに決まっているではないか、と。ありがとな…お腹が、とても空いている…明日パン買ってこよう…あとホットサンドメーカーが人生で初めて欲しくなっている。