日なたのアイスクリーム

オタク気質30代の散文裏ブログ。日常での気づきやオチのない日記、犬や猫のことなど。

猫は手帳を持っていない

子猫が病院へ行く日。そわそわして休日の二度寝という醍醐味は置き去りに、いつもより早く目が覚めた。

麻酔ですっかり眠っているうちに終わるとは分かっていても、自分が経験していないことをまだこの世界に1年も存在していない小さな動物が経験していく複雑さ。

同時に、「明日は手術か」と不安やドキドキ感を覚えるのは人間だからだな、と思う。たぶん当の本猫は、明日がその日ということが分からない。たぶん分かっていないはず。いや、だからたぶんだけど。

人間側が「明日は頑張ろうね」とか不安そうな表情をしていたらなにかを察することはあるのかもしれないが、私たちは極力そういう素振りを見せないようにした。

いつも通り。ただ少し、翌日の朝から夜までが違うだけ。なはず。

 

予測ができる、できてしまうことは人間特有の特技とでも言うべきか。明日なにがあるかうっすら分かっていることのネタバレのメリットと代償。そんな日ばかりではもちろんない、予測不可能な日も多いは多いけれど、古くは明日から幼稚園、明日から2学期。明日はテスト、明日は注射、明日は誕生日、明日はデート、明日は推しのライブ。さまざまな明日に想いを馳せて暮らしてはきた。不安になったり期待を持ったりするのは「分かってしまう明日の予定」が、人生のどのタイミングでもそれなりにあるからだ。

猫や犬は─もしかしたらそんなこともないのかもしれないが─人間が極力「なんともないよ」といつも通りに過ごしたままとして、明日どんなイベントがあるかを予測できるだろうか。

大半は緊張も覚悟もする時間もなく、淡々と事実に向き合わざるを得ない。ほぼネタバレのない生き方。ものすごいことだと思う。今年やってきた子猫も、1歳になった先住猫も、10歳になった先住犬も、私よりさまざまな適応力がある先輩だと思っている。

 

とは言え猫や犬が「未来を予測できない」とは、私は言っていない。これまでの私の体験からして、どう考えても「時間」のことは分かっていると思うからだ。朝は規則的な時間(とても早い)に鳴いたり人間を起こしたりするし、だいたい同じ時間に食事がしたいとアピールしてくるし、だいたい同じ時間に外を観察したりルーティンをこなし、だいたい同じ時間に寝床に向かうのを良しとしている。

もしかしなくても人間より時間の感覚が鋭い。動物にしか見えない時計がどこかに存在しているのではと思ってしまうが、空の色や空気や腹の空き具合で判断しているのだろうか。愛猫の黄色や緑がかった瞳、愛犬の黒目がちな潤んだ瞳には毎日がどう映っているのだろう。今朝の先住猫は庭のある一点をずっと飽きずに見つめていた。同じ方角にピントを合わせてみると、少しだけ朝の光の輝きが増したように思えた。

昨日まではわちゃわちゃとつるんだり取っ組み合いをしていた仲なのに、妹のような友達のような、もしくは「偶然いつも同じ場所にいる似たフォルムの個体」のような子猫が一時的にいないのは、なにか考えるところがあるのかもしれない。またはなにも考えていないかもしれないが、いないときは普通だったのに、いるのが普通になると途端に空白の空間を寂しいと感じる。感情も景色も。それも人間特有のフィルター?猫は忘れるとも言うけれど、子猫はすぐに帰ってくるからね、逆に寂しい景色をはやく忘れてほしいと思う。子猫が帰ってきたらおいしいおやつを特別にあげよう。もちろん全員に。

 

 

好きなブロガーの方が期間限定で毎日500文字程度の日常日記を書いており、触発されて「よし、サクッと書くぞ」と書き始めたが全然1500文字になってしまった。こんな日もあるが、基本は気楽に定期的に日々の出来事を文字に残していきたいと思う。